改善事例 株式会社アイ工務店への申入れ
株式会社アイ工務店に対し、同社が債務の履行に着手するまでに注文者が契約を解除した場合に、一律、請負代金の5%相当額の損害賠償金を支払うとの規定について、平均的な損害を超える部分が存在する等として改善の申入れをしたところ、以下のとおり改善してもらうことができました。 |
株式会社アイ工務店の工事請負契約約款
このたび、消費者からの情報提供を受けて、当団体は、㈱アイ工務店の工事請負契約約款を確認しました。
同社の約款では、同社が債務の履行に着手する前に注文者が契約を解除した場合、注文者は、同社に対し、損害金として、一律に請負代金の5%を支払わなければならないことになっていました。
しかし、同社が「債務の履行に着手する前」といっても、契約書を交わしただけの段階なのか、図面の作成を完了しているか等、様々な段階が考えられ、同社に生ずる平均的損害が、いずれの段階においても一律に、請負代金の5%になるとは考えられません。
工事着工前の請負契約の解除の際に、一定額の違約金を支払う旨の規定について、消費者契約法が適用され、平均的損害を超えている部分は無効となると判示した裁判例も存在しています(名古屋高判平成23年10月27日)。
そこで、当団体は、消費者保護の観点から、工事請負契約約款につき、消費者契約法9条1号に適合するような形での改善の要請を行いました。
また、契約に関し紛争が生じた場合の管轄裁判所について、同社の本店所在地とする条項についても、消費者契約法10条に基づき、改善の申入れを行いました。
株式会社アイ工務店に対する「申入書」等
申入れの結果
当団体の申入れに対し、株式会社アイ工務店は、当団体との間で法的見解の相違はあるとしながらも、注文者の中止又は解除権について定めた条項(第28条)につき、以下のとおり修正を行いました(なお、下記条項は、請負契約の注文者の無理由解除について規定した民法641条と同趣旨の内容を確認的に規定した条項であるとのことです。)。
「注文者は、工事の完成前までは、やむを得ない事由がある場合は、書面をもって工事を中止し、又は本契約を解除することができます。この場合、注文者は、請負者に対して、解除がなされた時期に応じて生ずる請負者の損害を賠償するものとします。」
また、管轄裁判所条項については、以下のとおり修正がなされました。
「本契約について紛争が生じたときは、請負者の本店所在地又は工事物件所在地を管轄する裁判所をもって、第一審の専属的合意管轄裁判所とします。」