改善事例 エヌ・ティー・ティー・ソルマーレ株式会社への申入れ
1 エヌ・ティー・ティー・ソルマーレ株式会社が運営する声劇等の配信オンラインプラットフォームサービス「ボイコネ」の利用規約(以下「本規約」といいます。)について、消費者から、損害賠償免責規定が多数設けられており、利用者による事業者に対する責任追求が不当に制限されている等の情報提供がありました。
2 申入れの内容
本規約を確認したところ、次のような問題が確認されたため、改善の要請を行いました。
(1) 損害賠償免責条項について
事業者の債務不履行又は不法行為によって、本サービスの利用者に損害が生じた場合でも、事業者の損害賠償責任を全部免除する規定となっているため、消費者契約法(以下「法」といいます。)8条1項1号及び3号に反し無効となる。
また、本サービスでは、利用者の保有する知的財産権の侵害等により相当の損害を被る可能性があるにもかかわらず、損害賠償額の上限を1万円としている規定は、免責の程度が信義則に反する程度に著しいと評価でき、また、サルベージ条項については、本来であれば全部無効となるべき条項を存続させるおそれがあるとともに、消費者にとって有効とされる条項の範囲が不明確となり、消費者の権利行使に対する萎縮効果を生むため、いずれも消費者に一方的に不利益な条項として法10条により無効となると考えられる。
(2) 知的財産権の制限規定について
事業者が行っている様々なサービスにおける営利目的でのプロモーションや企画・運営において、本サービスとは無関係に本サービスの会員コンテンツを無制限に無償で利用できる規定は、本サービスの利用者が保有する著作権の許諾の内容が不明確かつ広範すぎるものとなり、当該著作権が不当に制限されるおそれがあるため、消費者の権利を一方的に制限するものとして、消契法10条により無効になると考えられる。
(3) ロイヤルティの無効規定
契約が終了しただけでは、既に発生済みの権利義務は当然に無効になるものではないにもかかわらず、契約終了に際し、理由を問わず、会員が事業者に対して有している金銭債権を喪失させることができる規定は、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するため、法10条により無効となる。
(4) 専属的合意管轄条項
オンラインプラットフォームサービスの性質上、日本全国の利用者との間で紛争が生じる可能性があるにもかかわらず、大阪地方裁判所以外の管轄を排除して消費者の権利を一方的に制限する内容となっており、消契法10条により無効になると考えられる。
〇 エヌ・ティー・ティー・ソルマーレ株式会社に対する申入書等
3 申入れの結果
上記事業者は、当団体の申入れの趣旨を理解し、本規約を変更しました。
・ 損害賠償免責条項については、事業者に故意・過失がある場合には免責されない内容となり、損害賠償額の上限額及びサルベージ条項は削除されました。
・ 知的財産権の制限規定については、事業者による利用許諾範囲が本サービスに関連するものに限定されました。
・ ロイヤルティの無効規定については、削除されました。
・ 専属的合意管轄条項については、付加的合意管轄に改定されました。