改善事例 学校法人越原学園 名古屋女子大学への申入れ
~入学検定料の返金に関する条項の是正~
■入学検定料の返金
消費者が、入試を受験するために志願する大学に入学検定料を支払った場合でも、大学側が当該消費者は出願要件を満たさないと判断すること等により、入試を受験できない場合があります。
入学検定料は、本来受験をして合否判定をしてもらう際に必要な対価であるにも関わらず、学校側の判断等により受験そのものができなくなった場合でもその全部が返金されないというのは不合理と言えます。
■学校法人越原学園の約款
学校法人越原学園名古屋女子大学の入学検定料に関する条項においては、「一度納入いただいた検定料の返金はできません。」と定め、事情を問わず一度消費者が支払った入学検定料は一切返金できないことになっていました。
この点、消費者契約法10条は、法令中の公の秩序に関しない規定の適用による場合に比して消費者の権利を制限し又は消費者の義務を加重する消費者契約の条項であって、民法1条2項に規定する基本原則に反して消費者の利益を一方的に害するものは、無効とすると規定しています。
同校における出願手続きは、①出願登録、②入学検定料の支払い、③出願書類の提出、④受験票の発行という流れで行われることとされているところ、例えば、消費者が入学検定料を支払い、出願書類を提出したにも関わらず、同校が出願書類不備により受理せず、受験票を発行しなかった場合には、本条項のとおりであれば、同校から消費者に対し、入学検定料が返金されないことになります。同校における出願手続きにおいては、消費者の出願書類の提出により受験契約の申込みがなされ、同校の受験票の発行により申込みの承諾がなされて受験契約が成立するものと解されますが、例示した場合においては、同校による受験票の発行がなされず受験契約が成立していないにも関わらず、入学検定料の返金が行われないこととなります。この場合においては、消費者と同校との間で受験契約が成立していない以上、消費者から同校に対して支払い済みの入学検定料について不当利得返還請求権(民法703条)を有するところ、本条項はこれを制限するものであり、民法上の規定に比して消費者の権利を制限するものです。
同校が出願書類の審査に一定の業務を要するとしても、あくまで必要書類が全て提出されているか、出願要件を満たしているか等の形式的審査が中心であり、入試手続き全体の業務・費用における割合としても一部のものと考えられます。そうだとすれば、同校が受験票の発行をしなかった場合に、少なくとも入学検定料全額を返金しないことには合理性がなく、信義則(民法1条2項)に反して消費者の利益を一方的に害するものといえます。
そこで、同校が出願要件を満たさないと判断して受験票を発行しない場合には、少なくとも、消費者が入学検定料の一部の返金を求めることができる内容に改定するよう、申入れを行いました。
■申入れの結果
同校には、当法人の申入れの趣旨をご理解いただき、以下のように条項を改定していただけました。
「一度納入いただいた検定料は返還いたしません。但し、以下の場合は返金します。振込手数料はご負担ください。
1.過入金の場合は過入金分を返金します。
2.出願書類の提出前に受験辞退を申し出られた場合は検定料を返金します。
提出後の辞退は認めません。
3.出願締切までに出願書類が提出されなかった場合、また提出した出願書類に不備があり、締切までに再提出されなかった場合は受験資格を失うため、納入された検定料は過入金扱いとして返金します。」
高校や大学等への入学検定の受検の出願をした際に、大学側の判断により受験ができなくなったにも関わらず、支払った受験料を一切返金しないといった対応をされた場合は、お近くの消費生活センターなどで一度相談をしてみてください。