改善事例 大東建託パートナーズ株式会社(旧大東建物管理)への申し入れ
~建物賃貸借契約の原状回復に関する条項等の是正~
■民法における建物賃貸借契約の貸主の修繕義務や借主の原状回復義務の範囲について
民法上、建物賃貸借契約における貸主は、原則として、建物を使用するために必要な修繕をする義務を負います(民法606条)。
また、借主は、建物を退去するときに原状回復義務(借りたときの状態に戻す義務)を負いますが、通常の生活を送っていれば生じるような汚れやキズ(通常損耗)や建物の経年変化による劣化等(自然損耗)についてまで修理をする義務はありません(民法621条)。
■契約自由の原則と消費者契約法による条項の無効
一方、民法上、契約の内容は、当事者間で自由に決めることができるのが原則(契約自由の原則)とされています。つまり、契約する当事者で合意すれば、民法の規定とは異なる内容の契約を締結することもできます。
しかし、消費者が事業者と契約をしようとする場合に、消費者が事業者と対等に交渉することは大変困難ですので、どうしても消費者にとって不利益な契約を締結してしまいがちです。
そこで、消費者契約法は、こうした消費者と事業者との間には交渉力等に格差があることに鑑み、民法の契約自由の原則を修正して、民法の規定よりも消費者に一方的に不利益な契約条項については無効として(消費者契約法10条)、消費者の保護を図っています。
■大東建託パートナーズ株式会社(旧大東建物管理株式会社)に対する是正申入れ
平成24年、消費者からの情報提供により、大東建物管理株式会社(現大東建託パートナーズ株式会社)が使用する建物賃貸借契約書において、①付属器具類や電気設備の「小修理」、ガラスのはめ替え、「費用が軽微な修繕」等について貸主が修繕義務を負わないとする条項、②通常損耗や自然損耗についても借主に原状回復義務があるとする条項など、消費者契約法10条により無効となると考えられる条項があることが判明したため、是正を申入れました。
協議の結果、当団体の申入れの趣旨に沿う形(詳細は「改善事例報告書」をご参照ください。)で契約書を改訂するとの回答がありましたので、申入れを終了しましたが、平成29年になって、従前と同じ条項を含む契約書が未だに使用されている物件があることが分かったため、改めて申入れを行いました。
当初の申入れを受けた是正が徹底されていなかったことを踏まえて、①申入れの対象となった条項について今後は使用しないこと、②過去に対象条項を使用した契約書によって契約を締結した借主に対して契約条項を変更する旨の通知を送付すること、③対象条項の内容で借主に原状回復を求めたりしないこと、を大東建託パートナーズ株式会社が約束する合意書(令和3年12月21日付)を取り交わして終了となりました。