改善事例 株式会社ジャニーズ事務所への申し入れ
~チケットアプリの免責条項の是正~
■チケットアプリの利用により生じた損害
事業者が提供するアプリを用いてチケットの購入等を行う場合、システムに不具合が生じたり、第三者にIDを不正利用されるなど、様々なトラブルが起こりえます。
そして、そのようなトラブルが原因で、顧客に思わぬ損害や代金の負担が発生する場合があります。そのような損害や代金の負担が発生した場合、いかなる場合でもその損害を顧客に負わせるべきではありません。
■株式会社ジャニーズ事務所のチケットアプリ利用規約
株式会社ジャニーズ事務所のチケットアプリにおける免責条項においては、第9条3項において「当社は、本サービスの提供の停止または中断により、ユーザーまたは第三者が被ったいかなる不利益または損害についても、一切の責任を負わないものとします。」、第12条1項において「当社は、本サービスに起因してユーザーに生じたあらゆる損害について、当社の故意または重過失による場合を除き、一切の責任を負いません。」と定め、同社の責任を制限していました。
この点、消費者契約法第8条1項1号・3号は、事業者の債務不履行ないし不法行為により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項につき、無効とする旨規定するとともに、同条2号・4号は、事業者の債務不履行ないし不法行為(当該事業者、その代表者又はその使用する者の故意又は重過失によるものに限る。)により消費者に生じた損害を賠償する責任の一部を免除する条項を無効とする旨規定している。換言すれば、事業者に故意又は重過失がある場合、事業者は一切免責されず、事業者に軽過失がある場合、事業者は全責任を免れることはできないが、一部を免責することは可能として、消費者が受けた損害につき、適正な額の賠償請求ができるようにしています。
そして、本件規約は、第9条3項について、事業者側に起因する事情によってユーザーに損害が生じた場合、事業者に過失があっても事業者の責任を全部免除するものと解釈されるため、消費者契約法第8条1項1号・3号により無効となります。
また、本件規約第12条1項についても、事業者に軽過失があった場合でも事業者の責任を全部免除するものと解釈されるため、消費者契約法第8条1項1号・3号により無効となります。
そこで、各条項について、消費者契約法8条1項に適合するように改めるよう、申入れを行いました。
■申入れの結果
同社には、当法人の申入れの趣旨をご理解いただき、以下のように条項を改定していただけました。
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(免責条項)
第9条(本サービスの提供の停止等)について
・・・
2.前項各号に基づく本サービスの提供の停止または中断により、ユーザーまたは第三者に生じた損害について当社が損害賠償責任を負う場合、当社に故意または重過失がある場合を除き、当社の損害賠償責任は、ユーザーが本サービスを利用して購入したチケット代金を上限とします。
(改定前は3項として規定されていた条項であるが、項目数の誤記により2項に修正された。)
第12条(免責条項)
1.当社は、本サービスに起因してユーザーに生じたあらゆる損害について、当社の故意または過失による場合を除き、一切の責任を負いません。
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事業者の提供するサービスを利用した際に、事業者側に起因する事情により損害が生じたにも関わらず、損害の賠償を一切拒むといった対応をされた場合は、お近くの消費生活センターなどで一度相談をしてみてください。