改善事例 株式会社LINK(旧フォン・ジャパン株式会社)への申入れ
1 問題のある約款
Wi-Fi利用サービスを行うフォン・ジャパン株式会社(申入れ後、株式会社LINKに事業譲渡)の契約約款に、約款を変更した場合、当然に変更後の約款が適用されるとの条項、インターネット接続サービスの提供によって生じた損害については事業者が一切責任を負わない条項、電波状況等によりWi-Fi通信サービスを利用して雄受診した情報等が破損、滅失した場合事業者が一切責任を負わない条項、契約を解約した場合に翌月までの基本料金を支払うことを要する旨の条項、縛りのないプランで、利用期間において、Wi-Fi通信サービスを契約者の責任によらない理由で回線を全く利用しない状態が生じた場合に、そのことを事業者が認知してから24時間以上その状態が継続したときに、事業者がそのことを認知し、契約者からその連絡を植えた際に事業者が提示する金額を除き、契約者が契約期間中の基本使用料の支払を要する旨の条項、縛りのあるプランにおいて、途中解約の場合に3万円~9500円の違約金を定める条項、紛争が生じた場合の管轄裁判所を東京に限る旨の条項に対し、以下のとおり、改善の申入れをしました。
2 申入れ内容
(1)民法548条の4第1項は、約款を相手方との合意なく変更できる場合を、定型約款の変更が相手方の一般緒利益に適合するとき、変更が契約をした目的に反せず、かつ、変更の必要性、変更後の内容の相当性、民法の同条の規定によって定型約款の変更をすることがある旨の定めの有無及びその内容その他の変更についての事情に照らして合理的なものであるときに限っています。ところが、フォン・ジャパン株式会社の約款では、利用者との合意がなくても当然に変更後の約款が適用される旨定めていました。そこで、民法548条の4第1項に適合するように改めることを申し入れました。
(2)消費者契約法8条1項1号及び3号は、事業者の債務不履行や履行に際してされた不法行為により消費者に生じた損害賠償責任の全部を免除し、または事業者にその責任緒有無を決定する権限を与える条項を無効と定めています。ところが、フォン・ジャパン株式会社の約款では、インターネット接続サービスの提供により生じた損害については同社は一切の責任を負わない旨、また、電波状況等によりWi-Fi通信サービスを利用して送受信された情報等が破損又は滅失した場合、同社は一切責任を負わない旨定めていました。そこで、上記消費者契約法の規定を根拠に、同条項を削除することを申し入れました。
(3)消費者契約法9条1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについて、その超える部分を無効と定めています。また、同法10条は、法令中の公の秩序に関しない既定の適用による場合に比して消費者の権利を一方的に害するものは無効と定めています。ところが、フォン・ジャパン株式会社の約款では、縛りのないプランでWI-Fi契約者が契約の解除申請をした場合に、翌月までの基本使用料の支払を要する旨定めていました。そこで、上記消費者契約法の規定を根拠に、同条項を削除することを申し入れました。
(4)フォン・ジャパン株式会社の約款では、契約を解約した場合に翌月までの基本料金を支払うことを要する旨の条項、縛りのないプランで、利用期間において、Wi-Fi通信サービスを契約者の責任によらない理由で回線を全く利用咳内状態が生じた場合に、そのことを事業者が認知してから24時間以上その状態が継続したときに、事業者がそのことを認知し、契約者からその連絡を植えた際に事業者が提示する金額を除き、契約者が契約期間中の基本使用料の支払を要する旨定めていました。この条項に対しても消費者契約法10条を根拠に削除することを申し入れました。
(5)フォン・ジャパン株式会社の約款では、縛りのあるプランにおいて、途中解約の場合に契約締結後の経過期間に応じ3万円~9500円の違約金を定めていました。しかし、この違約金は、解約の時期によっては、期限まで契約を継続した場合と比べて支払総額が多くなるものであり、違約金緒定めが事業者に生ずべき平均的損害を超えるものであり、消費者契約法9条1号に違反するとして、違約金の額を事業者に生ずべき平均的損害の範囲内になるよう改めることを申し入れました。
(6)フォン・ジャパン株式会社の約款では、事業者とWi-Fi契約者との間に紛争が生じた場合に関する訴訟について、東京地方裁判所又は東京簡易裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする旨定めていました。しかし、これでは、Wi-Fi契約者が著しい不便、不利益を強いられるため、消費者契約法10条を根拠に、同条項を削除することを申し入れました。
3 申入れの結果
(1)については、民法548条の4第1項に適合するように改められました。
(2)については、事業者の故意又は重大な過失がある場合には、同条項を適用しない旨、また、相当因果関係のない、間接損害、特別損害、偶発的損害、派生的損害、結果的損害及び逸失利益については、一切責任を負わないものとする旨に改められました。
(3)については、解除があった日が属する月の末日までの期間の月額基本料の支払を要する旨に改められました。
(4)については、事業者の故意又は重大な過失により本サービスの提供をしなかったときは、同条項を適用しない旨に改められました。
(5)に関しては、新約款を適用する(当該サービス利用者全員が縛りなしプランに移行する)場合については、新約款において契約解除料に関する規定を設けないことにした旨、事業者が事業譲渡を受けた時点で、「縛っちゃうプラン」等フォン・ジャパン社制定「Wi-Fiサービス契約約款」が適用される各契約につき新規受付を停止しており、今後も再開の予定がない旨の説明がありました。
(6)については、改善されませんでした。