改善事例 アネシス美容クリニックに対する申入れ
1 問題のあるキャンセル規定
美容整形手術に関し、手術日決定後のキャンセルにつき、手術料全額のキャンセル料を課すキャンセル規定、消費者の不可抗力によって来院できなかった場合を除外しないように読めるキャンセル規定に対し、以下のとおり、改善の申入れをしました。
2 申入れ内容
(1)消費者契約法9条1項1号は、消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるものについて、その超える部分を無効と定めています。ところが、アネシス美容クリニックのキャンセル規定では、手術日の決定以降に手術のキャンセルや手術内容の変更、手術内容のキャンセル、または手術日程を延期された場合キャンセル料が発生し、キャンセル料の金額については手術代金全額と定めていました。このように、手術日決定後に時期等を問わず常に手術料全額のキャンセル料を定めることは、事業者に生ずる平均的損害を超える違約金ないしは損害賠償の予定を定めるものであり、消費者契約法9条1項1号に抵触します。そこで、消費者契約法9条1項1号に適合するように改めることを申し入れました。
(2)消費者契約法10条は、法令中の公の秩序に関しない既定の適用による場合に比して消費者の権利を一方的に害するものは無効と定めています。そして、民法では、当事者の一方が不可抗力によって債務の履行ができない場合には債務不履行の責任を負わない旨定めています。ところが、アネシス美容クリニックのキャンセル規定では、「身内のご不幸やご本人様の病気、交通事故などいかなる事情においてもキャンセル料は発生いたします。」と書かれており、これは、消費者の不可抗力によって受診できなくなった場合についてまでキャンセル料を免れないように読めます。そうであるとすると、民法と比べ、著しく消費者の不利に扱うもので、消費者の利益を一方的に害することになります。そこで、消費者の不可抗力による場合を除外することを明記するよう申し入れました。
3 申入れの結果
(1)について、キャンセル規定が以下のとおり改められました。
手術日の確定以降に手術内容の変更やキャンセル、または日程変更をされますとキャンセル料が発生いたします。
手術7日までの取り消し | キャンセル料なし |
手術5~6日前の取り消し | 手術料金の20% |
手術3~4日前の取り消し | 手術料金の30% |
手術2日前の取り消し | 手術料金の50% |
手術前日の取り消し | 手術料金の80% |
手術当日の取り消し | 手術料金の100% |
手術当日の予約時間以降の取り消し | 手術料金の100% |
無連絡による中止 | 手術料金の100% |
(2)について、「身内のご不幸やご本人様の病気、交通事故などいかなる事情においてもキャンセル料は発生いたします。」との文言が削除されました。