改善事例 弁護士法人大本法律事務所への申入れ
1 問題のある契約条項
弁護士法人大本法律事務所の委任契約書のうち、契約が解除になった場合の弁護士費用の精算に関する条項について、①着手金の不返還、②未払着手金の支払義務、③成功報酬の支払義務が定められており、①、②については契約の終了原因・理由を問わず、一律に不返還や支払義務を定めるものとなっていました。また、③については、受任者に帰責事由がある場合のみを例外とし、その他の場合は全て一律に報酬金の支払義務を定めるものとなっていました。
これらの条項は、委任契約が中途で終了した場合の受任者の得べかりし利益を填補する目的を有すると思われ、実質的な違約金条項に該当すると考えられるところ、何ら解約時期や既払金額の限定を付することなく、契約どおりの着手金・報酬金の支払を受けられるとすることは、受任者が被る平均的損害を超えて得べかりし利益を取得する結果となり得ることから、消費者契約法9条1項1号に違反するものと考えられ、改定を求める申入れを行いました。
また、民法上、委任契約の報酬については、委任契約が中途で終了した場合には、既にした履行の割合に応じて請求可能であるとされている(民法648条3項2号)ことと比較して、消費者に不利益な方向で支払義務を加重するものであるといえ、消費者契約法10条にも反すると考えられ、この観点からも改定を求める申入れを行いました。
2 申入れ内容
(1)契約の終了・精算に関する条項(6条)
前述のとおり、申入れ対象となった契約書では、①着手金の不返還、②未払着手金の支払義務については一律に支払義務があるという定めになっており、③成功報酬の支払義務について、受任者の帰責事由がある場合のみを例外として、他の場合は全て支払義務が定められていました。
これらの条項が、消費者契約法9条1項1号、10条に違反すると考えられたことから、民法の規定に沿うように改定を求める申入れを行いました。
3 申入れの結果
上記申入れについて、申入れに沿う形で、条項の改定を行った旨の回答がなされました。改定後の契約書では、事務処理の程度についての協議結果に基づき、着手金及び報酬金の全部もしくは一部の支払を行うものとされました。
以上