活動紹介

■ 割引と解約料
・準委任契約における任意解約権
準委任契約では、民法651条1項で、任意解約権が定められており、契約当事者は、いつでも解除することができるが、同条2項で、「やむを得ない事由」なく解除した場合で、①「相手方に不利な時期に委任を解除したとき」には、「解除の時期が不当であることに起因する相手方の損害」を、②「委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したとき」には、「報酬を除いて委任契約が解除されなければ受任者が得たと認められる利益から受任者が債務を免れることによって得た利益を控除したもの」という相手方の損害を賠償しなければならないとされています。ここで②の「受任者の利益をも目的とする委任」とは、カッコ書で除外されていますので、単に報酬が支払われているというだけでは該当しないとされています。
判例で、やむを得ない事情がないときであっても、委任者が「解除権自体を放棄したものと解されない事情」があれば、解除ができるが、これによって受任者が受ける不利益は損害として賠償しなければならない(最判昭56・1・19民集35巻1号1頁)とされています。多くのスポーツ・ジム会員契約では、約款上、任意に解約はできるが、一定の違約金(解約料)を払わなければならないと定められていますので、その違約金(解約料)の額が高過ぎではないかということが問題となります。

・民法が規定する賠償ルール
任意解約権を定めた場合、会費支払以外の事業者(受任者)の利益をも目的としていなければ、そもそも任意に解約したからといって事業者に対しての賠償義務は発生しません。何らかの事業者(受任者)の利益をも目的とした契約であった場合に、「解除されなければ受任者が得たと認められる利益から受任者が債務を免れることによって得た利益を控除したもの」を賠償しなければならなくなるのです。ここで、「解除されなければ受任者が得たと認められる利益」は、いわゆる得べかりし利益ですが、裁判上、得べかりし利益の賠償が認められるためには、その原因がなければ、その得べかりし利益を確実に得られたであろうという高度の蓋然性が必要とされています。

・スポーツ・ジム会員契約
事業者が運動するための器具を提供し、会員は、会費を払って器具を利用して運動することができる、というスポーツ・ジムの会員契約では、会員は主に会費支払義務を負い、事業者は主に器具を備えた施設を利用させる義務を負っており、有償双務契約といえます。また、事業者は主に器具を備えた施設を利用させるというサービス(役務)を提供する義務を負っていますから、準委任契約を参考に、会員契約を考えることになります。
任意に解約できるが、一定の違約金(解約料)を払わなければならないという約款の条項(以下では、単に、「違約金条項」といいます。)は、先に整理した民法の準委任契約の規律から考えれば、損害賠償の予定かそれに類似したものといえます。
民法上、任意解約に伴い受任者が委任者に対して損害の賠償を請求し得るのは、報酬(会費)を得ること以外の受任者の利益をも目的とした契約であり、かつ、委任者が、やむを得ない事情がなく解約したときに限られ、その損害の内容も、「解除されなければ受任者が得たと認められる利益から受任者が債務を免れることによって得た利益を控除したもの」、つまり、その解除がなければ、確実に得られたであろう高度の蓋然性が認められる利益から、その解除によって支出を免れた分を損益相殺したものに限られます。
そのため、違約金条項は、損害賠償請求権の発生原因、請求できる損害の内容及び金額について、民法の一般原則を修正する特約といえます。

・消費者契約法9条1項1号
消費者契約法9条1項1号は、「当該消費者契約の解除に伴う損害賠償の額を予定し、又は違約金を定める条項であって、これらを合算した額が、当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ、当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額を超えるもの」について、「当該超える部分」を無効とする、としています。
違約金条項は、民法の一般原則を特約として修正しつつも、消費者契約法9条によって、「当該条項において設定された解除の事由、時期等の区分に応じ」て、「当該消費者契約と同種の消費者契約の解除に伴い当該事業者に生ずべき平均的な損害の額」を超えると、超えた部分が無効とされるといった形で、さらに修正されることになります。

・改善事例 株式会社総和不動産(SWR24GYM)
このスポーツジムでは、1年契約にのみ、入会金、事務手数料、登録料、3ヶ月間の会費を無料とする入会キャンペーンがある代わりに、1年経過する前に退会すると3万円の違約金(解約料)が発生する条項になっていました。1ヶ月あたりの会費が約4000円でしたので、退会の時期によっては、1ヶ月契約で更新を繰り返していった場合より、支払う総額が大きくなってしまうことが問題でした。
そこで、消費者契約法9条1項1号に沿うように是正するよう求めたところ、解約料を、3万円または「契約残期間の会費全額、キャンペーン適用により払われていない諸費用や会費の合計額のうち低いほうにする」との提案がありましたが、これでは結局、5か月目以降に退会した場合、キャンペーンを適用して会員となった者が退会せずに12か月間に支払う会費等の合計額を超えてしまうという問題が残りました。そこでさらに、キャンペーンに誘引されて契約した会員が、キャンペーンの適用なく通常の会員となっていたであろう高度の蓋然性は認められませんので、解約料の上限は、キャンペーンを適用して会員となった者が退会せず12か月間に支払う会費の合計額となる旨、改めて指摘しました。これにより、1年契約の残期間の通常会費総額を解約料の上限としてもらいました。ほかにも、規約の改定方法、施設が利用できないときの会費の精算、賠償責任の免責条項、ホームページ上の記載など、改善していただけました。

改善事例報告(株式会社総和不動産)

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